「大奥」 よしながふみ (現在1~9)
2012年 12月 06日
ガラかめでバレバレだと思いますが、実は漫画も大好きな私。読書の一部みたいなものつうか。
時代物も好きです。で、よしながふみ作 「大奥」
若い男だけを殺す疫病 「赤面疱瘡」 の流行で、男が女の4分の1に減り、男は種を持つ宝として大切に育てられ、女がすべてを担わざるを得なくなった江戸時代。婚姻制度は崩壊し、町の女たちは遊郭で種を付けてもらい子供を産む。婿を取るのは贅沢なことになる。そんな中、天下人たる公方様だけに許された最高の贅沢、それが男の少ないこの世で美男三千人を集めたといわれる男の城 「大奥」 だった。
ここまでしないと女性中心の世界は成り立たないんだなぁ、という一種のSFなのに、歴史上の重要人物は (性別がしばしば逆だけど) きちんとみんな出てくるし、ちゃんと吉屋信子の 「徳川の夫人たち」 な展開になるのが素晴らしい。実在の歴史と改変の巧妙なブレンド。
決して女性天国ではなく、
「男女の役割は逆転したのではない。正確に言えば男は子作りしかしなかった」 子育てから仕事まで、女がすべてを背負い込むことになったのだ、というのもリアル。
7巻ではちょっと料理漫画 (うわー味わってみたい!)
8巻からは、これまた好きな医療物の色彩も加わり、面白さアップです。
そうそう、この人は 加齢 を描くのがとても上手いですね。
これだけジジババロマンスで読ませる漫画もちょっと珍しいw
個人的なツッコミどころは、男を買って子供を産む方式で人口が維持できるのか? ということ。男児は死ぬ率が高いから、4,5人は生まないと追いつかなさそうなのに、貧乏人は跡継ぎの娘が生まれたら良しとしちゃうかも。
あと、三食昼寝付きどころじゃない優雅な立場なのに、武家屋敷や大奥で働こうという男が一定数いるのは? 自己実現の欲求もあるからかな。
大奥に閉じ込められて男の闘争心が満足できるのか、も最初は思ったけど、あれだけ陰湿な権力争いしていれば大丈夫そうw
Amazon.com の英語版の読者レビューが面白かったです。
江戸の歴史を知らないで、どこが改変か分からずに読んでるだろうことはお気の毒ですが、十分楽しめてるよう。
"ヤオイ" だの "ユリ" だのがそのまま英語に使われてるのも…爆
英語版は you じゃなくて "thou" とか、シェークスピア時代の言葉に訳されてるそうで。原作は多少の武家言葉はあるとはいえ平易に読みやすいのに、英語版はもろ 「古文」 に感じるらしい。大変だなぁ。
ら
日本で言うなら、「死に給へ 麿も死なむ」 くらいな(笑?
現代語では、「死んじゃえ! あたしも死んでやる~」 みたいな(笑?
(源氏物語にこんな夫婦喧嘩があったような)
そうそう。11代・家斉は男だろうという予想を掲示板でよく見ますが、ここはぜひ女で通していただきたい。マリア・テレジアパターンなら大丈夫! 51人でなく約3分の1だけど、産みも産んだり16人。これでも十分子供が余って他家に押しつけることにできるはず。
もう一つ、日本家屋の仕組みを知らないからこそだろう突っ込み。え、御殿って廊下=濡れ縁=ほぼ外?? お膳重ねて運んでくる料理が超、冷めそう。上から下まで障子を開けはなって庭を見ているシーンがやたらに多いけど、夏は蚊だらけ、冬は極寒になるのでは(笑) 本格的な明かり取りにはそれしかないのでしょうか。