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日本版LNDも気に入りました


by yukituri

読書 「テンペスト」 池上永一

仲間由紀恵さんの主演で来年舞台になると、某ブログで先日見かけ、気になっていたので図書館で借りて読んでみました。

日本で言えば幕末の頃の琉球王国で、学問好きなため宦官と偽って男装し、超難関の科試を史上最年少で突破して高級官僚になる少女、孫真鶴 (男名・寧温) の物語。

主人公の寧温/真鶴は、違うのは髪形と着物くらいなのに、両方を知っている人でさえ別人と信じ込んでいるほど、表情も態度も違うわけですから、演じるのが難しそうな役~!

見返しにたくさんあしらわれている小さいイラスト、きりっとした美貌は仲間さんのイメージに合ってますね(^^)

以下、本の感想です。



13歳にして外交の第一線に登用されたのはいいけど、女とばれると 「宮殿を汚した」 として斬首になりかねないというのですから、毎日が命がけ。その中で、卓越した国際感覚と語学力で何度もを国の危機を救う主人公の姿は、緊迫感と爽快感が大きいです。薩摩の武士との恋や、後半の怒涛の運命も読ませます。骨太な話ですね。

前に別シリーズを読んでいる時、「四書五経の暗記中心の受験勉強してきた若者たちが、現実の政治で突然すごい力を発揮できるものかなぁ?」 と不思議だったのですが、この話では試験がそもそも現実の政治・外交の難局からの出題だということで、割と納得できました (現代のキャリア試験だってこんな難しくなさそう^_^;)

まあ、年に多くて数人、しかも重臣直結の合格者への身元調査がこんなに甘いの? とか、看病や拷問されても性別がばれないものかい? とか、医学的に無理だろ (青カビを舐めて梅毒を防ぐ怪人物とか) なことや、王族にする人をこんなスルーパスにしていいのか、とか突っ込みどころもいろいろありますが(^_^;A それがあまり気にならない読み応えでした。

この地域を舞台にした時代小説を読むのは初めて。宗主国は清、実効支配者は薩摩藩という二重支配の下で武器を禁じられた琉球の生き残り方法 (バランス感覚+美意識と教養とおもてなし)、世界でも有数だった遭難救助精神、日本とは微妙に違う歌や踊りや着物 (帯を締めるのは男だけというのが面白い) など初めて読むことが多く、勉強になりました。

琉球を自由貿易地域として列強の緩衝地帯化、独立を保つという寧温の構想は興味深く、(歴史はもちろん変えられないけど) 実現しなかったのが残念でした。
そして、この優しい琉球王国が、美意識の極地として描かれた首里城が、日本に併合された後どうなったかを考えると、切なかったです。
by yukituri | 2010-04-22 12:57 | 普通の日記、PC・語学関係